D51-827号機の整備 NO-3(懸架金具・空気清浄装置)

 827号機の整理作業を進めている段階で827号機が装備している遮断幕と運転席への空気清浄装置に特徴が有る事が判明したので、それに関して考察を試み

た。まず、黄麻製の遮断幕であるが、その目的は運転室へのトンネル内において後部からの巻き込み風による煙突からの煤煙の流入を防ぐ為と、寒冷地の走行に

よる空気遮断を目的としたものと考えられる。おそらく中津川・木曽福島機関区を管轄する長野工場での造作と考えられる。現在長野県で静態保存されている各機

の遮断幕を吊下げるためのU字形の懸架装置と運転席への空気清浄装置の有無を確認したものが「資料」2である。やはりかなりの保存機に同様の装置及び取り

付け穴の存在が認められた。D51-402・824号機の如く後部天井部に格納庫を持つ形態(内部に遮断幕が存在するかは未確認)や懸架装置のU字型アングル

が一段式と二段式、遮断幕取り付け棒を入れ込む○型アングルを付随させるものなどがある事が判明した。しかし、遮断幕の運用に関してはテンダーの石炭取出口

は外にあり、石炭投入に関しては若干問題があるのでは無いかとも思われる。(中津川D51-266号機渡邉保存会長さんは現役時代に827号機を幾度も運転さ

れておられますので、次回中津川を訪問した際に詳しくお聞きして、ご教示を得たいと思っています。)


 全国の保存機にその類例を求めるに、東北・北海道の保存機に同様な懸架装置が存在する事が判明しているが、その他の地域では遠く九州の肥薩線で矢岳越に

従事したD51-170号機にも見られる。その他では駒ヶ根市のD51-837号機にも見られるがアングルが長野工場製とは異なり、山陰地方後藤工場の製品とも

予測される。これらの見地からトンネル内煤煙対策と寒冷地対策の両面を持っていたものと推察できる。しかし、保存されているD51型のみのデータであり。活躍し

ていた時期のD51全機に相当するものでは無いので、一考察として提案しておきたい。

 さて、北海道の保存機の大半は寒冷地対策を施した密閉型キャブが苗穂・釧路両工場で改造されている。その密閉キャブであるにも関わらず遮断幕を装備してい

た機が数機存在する。密閉型の後部を遮断する幕はオープン型キャビンのそれと比較すると、一回り小さい感じがする。それはD51-320号機に現存しており、淡

路市に保存されているD51-828号機にもその断片が存在する。長野県内に保存されているD51-59・483号機の懸架装置は正しく北海道仕上げの機体である。

 次に、これは中津川機関区に在籍した機関車に設置された可能性が大である。(保存機の数が限定されており、長野工場管轄下とした方が妥当と思われる。)運

転室下部に空気を取り入れる空気清浄装置が装備されており、その流入口は運転席の足もとにあり、まさしく運転席が煙突からの煤煙で覆われ、窒息を防ぐための

装置と理解できる。これも二種類あり運転席の前方から斜め前に、第四動輪と従輪の間に設置される物と運転席直下に設置される物に大別されるようである。トン

ネル区間の多い中央西線を走行した機関車の特徴と理解できる。
                                 2013/08/21

資料2
機種・番号 製造年 製造所 中津川在籍 木曽福島在籍 廃車年・機関区 遮断幕・懸架装置   空気清浄装置
D51-2 1936 川崎重工 1950~1955 1971・稲沢一 左右に取り付け穴 空気清浄装置あり・直
D1-59 1937 川崎重工 1976・岩見沢 左右に懸架装置あり 辰野町静態保存
D51-101 1938 汽車製造 1972~1973 1973・中津川 懸架装置未確認
D51-155 1939 日本車両 1970~1973 1973・中津川 左右に取り付け穴 空気清浄装置あり・斜
D51-172 1939 日本車両 1949上諏訪 1970~1973 1973・木曽福島 左右に取り付け穴 空気清浄装置あり・斜
D51-192 1939 国鉄大宮工場 1970~1973 1973・中津川 保存後解体
D51-200 1938 国鉄浜松工場 1950~1972 1972~梅小路 懸架装置未確認・空気清浄装置あり・直
D51-201 1938 国鉄大宮工場 1969~1973 1973・中津川 左右に懸架装置あり
D51-209 1938 国鉄浜松工場 1972~1973 1973・中津川 左右に懸架装置あり・空気清浄装置あり・直
D51-238 1939 国鉄苗穂工場 1972~1973 1973・中津川 左右に取り付け穴あり
D51-245 1939 国鉄浜松工場 1966~1973 1973・中津川 左側懸架装置あり・右穴のみ
D51-266 1939 川崎重工 1949~1971 1971・中津川 左右に取り付け穴 空気清浄装置あり・直
D51-349 1940 日立笠戸 1958~1963 1976・追分 左右に懸架装置あり
D51-351 1940 日立笠戸 1971~1973 1973・木曽福島 左右に取り付け穴あり
D51-401 1940 日本車両 1971~1973 1973・木曽福島 左右に取り付け穴あり
D51-402 1940 日本車両 1958~1972 1972・中津川 後ろ上部に格納庫・空気清浄装置あり・直
D51-483 1940 国鉄小倉工場 1976・滝川 左右に懸架装置あり 安曇野市静態保存
D51-549 1940 国鉄長野工場 1954~1973 1973・中津川 左右取り付け穴あり
D51-688 1942 国鉄浜松工場 1971~1973 1973・中津川 未確認
D51-769 1943 川崎重工 1960~1972 1972・木曽福島 左側懸架装置あり・右穴のみ
D51-775 1942 汽車製造 1971~1973 1973・木曽福島 左右に取り付け穴あり
D51-777 1942 汽車製造 1959~1972 1972・中津川 左右に取り付け穴 空気清浄装置あり・直
D51-787 1943 汽車製造 1954~1971 1971・木曽福島 左右に取り付け穴あり
D51-792 1942 三菱重工 1949~1973 1973・中津川 左右に取り付け穴 空気清浄装置あり・直
D51-824 1943 国鉄浜松工場 1970・長野 後ろ上部に格納庫・空気清浄装置あり・斜
D51-827 1943 国鉄浜松工場 1946~1973 1973・中津川 遮断幕現存左右懸架・空気清浄装置あり・直
D51-837 1943 国鉄鷹取工場 - - 1974・長門 左右に懸架装置あり 駒ヶ根市静態保存
D51-921 1943 川崎重工 1952~1972 1972・木曽福島 左右に取り付け穴あり
D51-1101 1944 三菱重工 1972~1973 1973・木曽福島 左右に懸架装置あり
全てオープン キャブ 直は運転室直下・斜は第四動輪~従輪間
参照1
D51-68 1937 日立笠戸 1955~1971 五稜郭 1976・追分 左右に懸架装置あり オープンキャブ
D51-270 1939 川崎重工 直江津・東能代 秋田・弘前など 1968・大館 左右に懸架装置あり オープンキャブ
D51-512 1940 国鉄大宮工場 1940~1971 新津 1972・長岡 左右に懸架装置あり オープンキャブ  
D51-1108 1944 日本車両 新津・大館・弘前 青森 1972・会津若松 左右にL型懸架装置あり  オープンキャブ
参照2
D51-311 1939 日立笠戸 1948・旭川~ 1961・遠軽~ 1975・遠軽 左右に懸架装置あり 密閉キャブ
D51-320 1939 日立笠戸 1939・函館~ 1970・小樽築港 1976・追分 左右に懸架装置・遮断幕現存・密閉キャブ
D51-397 1940 日本車両 1940・追分 1969・北見 1973・名寄 左右に懸架装置あり 密閉キャブ
D51-565 1940 川崎重工 1940・大館 1968・小樽築港 1976・追分 左右に懸架装置あり オープンキャブ
D51-566 1940 川崎重工 1941・函館 1967・追分 1976・岩見沢一 左右に懸架装置あり 密閉キャブ
参照3
D51-828 1943 国鉄浜松工場 1943・米原 1948・旭川 1976・追分 左懸架装置あり 遮断幕断片存在 密閉キャブ



 本HPおよび当827号機ページをご覧の皆様方へのお詫びとご報告です。

 この度、私の事情で827号機の整備メンバーから外れる事になりました。その理由としては2013/10より愛媛県西条市所在のC57-44号機の整備を西条市

から依頼されており、その準備とC57-44号機の情報収集や備品確保の為に北海道に出向く予定であり、これ以上827号機に関わる時間が無くなりました。また、

所有者の御意向は理解できますが、解体等を防ぐための整備を私は活動の基本としておりますので、他の方に今後の本機の整備は委任したいと思います。今回

「幻の827号機」のお手伝いをさせて頂きまた一つ勉強させていただきました。少しは827号機の現状をご紹介できたかと思っております。所有者にはこのページを

通じて厚く御礼申し上げます。

 したがいまして、当ページを今後作成する事が出来なくなりました事をお詫び申し上げます。なお、827号機の整備に関しては所有者から全面的に信任を得ておら

れる久世氏が今後も整備を続けられる事になると思いますので、今後は久世氏のブログをご覧頂ければ827号機の動きに関しましては判明するかと存じます。なお、

当方がお預かりしておりました827号機の部品等は全て所有者に返却いたしております事を付記します。             2013/08/21 愛媛のKAZE

*D51-827号機に関する情報は次のブログでも紹介されておりますので、そちらもご覧ください。
      http://blogs.yahoo.co.jp/kuze3004 「静態保存車輌」
   

* 2017/04にアチハ(株)に譲渡された本機はその後圧縮空気による「エア動態」改造がなされ、2017/06/25に有田川鉄道線路(約200m)において最初の走行が行われた。今後アチハ(株)では希望により各地で走行させる予定との事です。      2017/06/27


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