「SL整備記録 NO-3 大山正風」
D51-827号機の整備 NO-2(運転室・部品等)
運転室内部
現在運転室内は速度計を除き主要計器類等はすべて撤去し保管している。整備が進んだ段階で取り付ける予定である。運転室内で特筆すべき事は本機は密
閉型では無いために、後部からの巻き込み風(トンネル内での煙突からの煤煙流入)の侵入を防ぎ密閉を目的とした遮断(閉)幕(黄麻製)が現存していた事である。
現在動・静態保存されているD51型機関車の運転室後部の外側左右上部にU字型の懸架金具が残る機体は数機存在(大阪市交通科学博物館D51-2・駒ヶ根市
D51-837・宇都宮市D51-947等)し、特に長野工場管轄下の機体に見受けられる特徴である。北海道の密閉型キャブでも後部に遮断幕を取り付けている機は
北海道安平町追分記念館のD51-320号機であろう。また遮断幕の残骸の一部が淡路市のD51-828号機に見られる。しかし、オープン型運転室で完全な状態
の遮断幕本体が残存しているのは唯一本機のみであり、誠に貴重な財産と言える。
機体の周囲に山と積まれた荷物等が本機を守っていた訳であるが、除去された結果侵入者による盗難の恐れが出てきた為、所有者の意向により盗難防止と整
備の都合上、ナンバープレートは久世氏が各部品は私が預かり整備・一時預かり保管する事になった。 撮影日2013/04/28 05/06・07・09
2013/6/1、本機の視察に河村たかし名古屋市長が来られた。市長は名古屋市内に日本・世界のSLを集め、子供たちが自由に触り・乗り・遊び・学ぶ施設を建
設する構想を持っておられ、実際にSLを現状路線において走行させたいという希望も持っておられ、2013/2/16・17にはC56-160号機による「SLあおなみ号」
の実験走行が行われている。市長は購入候補の一つとして本機を考えておられるようでその視察に来られた。それに先立ち正規の青ナンバープレートを前・左に付
け、運転室は最低限度の計器類を取り付けた。機関車前方・足廻り関係は久世氏、運転室内は私が分担して市長への説明を行った。以下はその際の様子である。
河村市長は終始興味深く本機をご覧になり説明に対して質問もされ、益々関心を高められた様子でした。
40年の時を経て正規青ナンバープレートを取り付けた本機は威風堂々としており、その表情は喜んでいるようにも思え、凛とした風格は保存整備に関わる者には
感動的な光景であった。 撮影 2013/06/01
私が預かった本機の部品は以下のとおりである。いずれも洗浄して油煙を除いた状態であり所謂磨きだしは行っていない。暖房用圧力計とブレーキ圧力計のガラ
スは破損及び欠損状態であったのでプラ板に交換した。暖房用圧力計の検査印(昭和47年6月)はガラス取り換えのため、またブレーキ圧力計の検査印は修復出
来ない状態なのでボイラー圧力計の剥がれていた検査印(昭和48年5月)をコピーして貼り付けた。両機関車標識燈は錆が酷く破損個所も見られるので、軽く研磨
後再塗装をおこなった。両燈とも電球は生きており24Vで点灯を試みた。コードの付け根が接触不良を起こしており将来的にはコードの付け換えが必要である。特
筆すべき事は本機の蒸気機関車検査表が存在する事であり、内部にボイラ検査証が存在しておりいずれも貴重な資料である。 撮影日 2013/06/09