SL 人 吉 号(乗車記)
8620型機の58654号機「SLあそBOY]号が引退していたが、SLファンの熱望もあり、JR九州では58654号機の缶の修理・各部位
の修復を 行い、2009/4/25から「SL人吉」号として熊本~人吉間の肥薩線で運行がはじまった。今回は乗車と今後の整備の参考目
的に訪問した。
2009/5/21夜松山を出発、愛媛三崎港から大分佐賀関港へ、深夜に阿蘇カルデラ内を走り早朝に熊本駅に到着。インターネットで申し込んでいた乗
車券を入手、少し早いが入線の様子が撮影できるかと0番ホームに向かう。私が蒸気機関車に乗るのは何年振りであろうか?高校生の時に松山機関区
に所属していたC58型機・宇和島機関区に所属していたC12型機(現JR内子駅前保存)の牽引する列車に乗車した記憶がある。愛媛県でも南予地方は
急坂やトンネルが多く、あの独特の動きと石炭の煙が甦り、心が焦り足が速まる。ホームにはまだ入線していなかったので三角線のホームからとカメラを
設定した。三角線の編成車輌が出発すると、何と3番線に58654号機が客車を従え待機しているではないか、慌ててカメラを向けた途端始動し始め、動
画カメラが間に合わず最初の出会いは大慌てのコンタクトでした。
乗車前に運転士さんにいろいろとお話を聞く事ができた。石炭は5トン積んであるとの事、肥薩線人吉までは豊肥線の立野のような急勾配は無いので
運転も当然ながら機体にとっても楽であると言われていました。速度計は時速30㎞でリミットの赤指標が設定されていました。運転室内部を見せていた
だきましたがどの部位・部品もピカピカに輝いていました。客室乗務員の方に記念に写していただいて、いざ乗車!
定刻の9:41分に0番ホームから発車、本当に滑るように(新幹線並み)走り始めた。私の記憶にある蒸気機関車の出発、汽笛は同様であるが、最初
に動輪が3分の1~半分程空転し、連結器のガクンという衝撃があり客車が続く、立っている者は少なからず後ろによろめいたものである、その記憶が全
く感じられない。運転士が上手なのであろうが、牽引する客車が特製の軽量車体である事も理由であろう。「あそBOY」は重たい旧車両を牽引し立野のス
イッチバックを登っていたのだから、疲弊するのも当然の事であり、これなら当分「人吉」号は安泰であろう。
車掌さんが本日はほぼ満席でございますというのだが、私の指定席より前の1~3番は空席のままであった。しばらくすると車掌さんが、「本日は撮影が
ありまして、ご協力をお願いいたします。女優の伊藤こずえ・田中美奈子さんが八代から乗車されます。」との事で他の乗客は驚きの表情でした。まさしく
サプライズ!
八代駅で乗車してきたのは「伊藤こずえ」さんと「伊藤麻衣子・・現・・いとうまいこ」さん・・ダブル伊藤さんでした。お二人が乗車すると、撮影中にも関わら
ず他の車輌からも続々と見物客が押し寄せ、一時騒然となりましたが撮影は進行、車外の景色を眺めたり、旅の様子を二人仲良く話され、展望ラウンジや
他の客車へ移動されたり、駅弁「ごっつお弁当」を楽しく食べられたりして一勝地駅まで同行でした。番組は「土曜スペシャル」とかで6月6に放送だそうです
が・・熊本のローカル局なのか、全国ネットかも解らず・・愛媛では多分見ることはできないか・・・
「SL・人吉号」は球磨川・川下りの渡駅に停車、明日は一勝地駅と渡駅を撮影ポイントにしているので車外を観察しチェック、そして定刻12:13分に人吉
駅に到着しました。隣のホームに即移動し、運転士側(公式サイド)を撮影し、転車台のある機関庫の方へ移動した。機関車は客車ごと入れ替え線に移動後
客車を切り離し、単機で機関庫前の駐機場所でしばし休息。
待つこと約1時間強、転車台にバックで登場、オレンジ色の転車台に乗り180度方向転換し、再び駐機後入れ替え線へ。
二日目・・・早朝熊本を出発、九州道の御船インターから人吉インター経由で一勝地駅へ、午前9時過ぎに到着。駅の観光協会の方にお話を聞く、駅舎
内でSL展をされていたので拝見、昭和42~48年当時の一勝地駅付近の様子が映し出されていました。当時の一勝地駅は人吉機関区の予備区のよう
な感じで、昭和48年には廃車となったSL数機が待機線に駐機されている写真もありました。一勝地駅はその名前から、開運・祈願成就に訪れる観光客
も多いとの事、球磨川の流れも奇岩も美しい場所でした。
一勝地駅東側(人吉方面)の旧待機線上に陣取り、「SL・人吉」号の到着を待つ、天気は晴れ少し風があり風向きが一定でなく少々気がかりである。定
刻に到着、昨日と同じ様に10分間の停車の間に乗客は機関車の前で記念撮影をしている。 汽笛が響き山にこだまが続く、他に撮影者はいない、絶好の
条件である。しかし、突然風向きが変わり進行方向に煙が流れはじめ煙の中から58654号機登場!という状態になり、これも偶然の産でありまた味わい
のある撮影となりました。
次に渡駅に移動、ここは無人駅で「球磨川・下り」の最寄の駅なので停車駅に選ばれているようです。近くには川下り専用の駐車場もありました。球磨川
沿いの堤防上に移動し到着を川風に吹かれながら待っていると、どこからか音楽と案内の言葉・・目を球磨川に向けると川くだりの川船が次々と下ってき
ました。急流も鮮やかな櫂さばきでしばし見とれていました。
いよいよ最後の撮影、太陽が再び顔を出し風向きも良好、周囲には私だけの最高の撮影状態でした。定刻に渡駅到着、直ちに出発、汽笛一声、ドラフト
音と黒煙をたなびかせ、西日を浴び橋梁上を渡る独特の走行音を残し、「SL・人吉」号は私の視野から消えて行きました。最後にとても良い写真や動画を
写すことができて、大満足と充実感を感じながら帰途に着きました。
渡駅・到着 渡駅・出発
最後に、乗車時にいただいた「SL・人吉」号のパンフレットを紹介して、乗車記を終わります。 愛媛のkaze